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キマダラルリツバメ Spindasis takanonis (鱗翅目、シジミチョウ科)



~京都の宝物~
 梅雨の晴れ間、ヒメジョオンやクローバー、イボタの白い花の上で吸蜜する可憐なチョウがいます。指の爪ほどの大きさで、翅を閉じているところをよく見ると、トラのような黄色の地に黒いしま模様があります。黒い筋の中には銀色の飾りをあしらい、後翅には尾状突起と呼ばれるかわいいしっぽをつけています。翅の表はチョコレート色をしていて、雄の前翅のつけねは紫色に美しく輝いています。夕日を浴びて敏しょうに空中を飛んでいると、翅の表裏のコントラストのためか銀色に光って見えます。
 産卵直後の卵は青緑色、やがてブドウ色に変わります。卵期は10日前後。ふ化直後の幼虫はソメイヨシノやヤマザクラ、ヤエザクラ、アカマツ、クロマツなどの樹皮下に生息するハリブトシリアゲアリの巣に自力で入り、この巣の中で育てられます。口移しでえさをもらい、巣の中で育ててもらう代償として、幼虫の密腺からアリが好む分泌液を出してお返しをします。幼虫にとってアリの巣の中は、外敵に襲われることのない安全な場所だとも考えられます。
 京都府内には桜の古木や並木、アカマツ林が多く、山科区や左京区を流れる疏水路のサクラ並木、八瀬・御室・嵯峨野・嵐山・福知山の三段池などで採集されます。近年サクラやマツの害虫退治として、頻繁に殺虫剤の空中散布が行われます。京都の宝物のひとつとして後世に残すべきこのチョウも、薬剤散布の影響でいずれ姿を消すかもしれません。

 この珍しい小さなチョウが絶えることなく生息する環境を守ることが、
            快適な未来都市づくりをめざす京都の役に立つのではと考えています。
文・写真 保賀 昭雄
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